生まれつき歯が少ない先天性欠如
通常、永久歯は親知らずを除いて28本存在します。
しかし、生まれつき永久歯の一部が存在しない・作られていないことがあり、これを「先天性欠如」と呼びます。前から2番目の側切歯、前から5番目の第2小臼歯が欠如するケースが多くなります。また、1本だけとは限らず、多数歯の欠如も見られます。
歯が少ない先天性欠如の子が増加している!?
永久歯の先天性欠如は、10人に1人程度の割合で見られるものであり、決して珍しくはありません。
また、ヨーロッパ矯正歯科学会の発表によると、近年、先天性欠如が増加傾向にあると言われています。
先天性欠如かどうか調べる方法
先天性欠如かどうかは、レントゲン検査にてすぐに確認できます。いつまでも乳歯が残っている場合には、永久歯の先天性欠如を疑い、早目に歯科医院を受診しましょう。
先天性欠如の原因は?
先天性欠如の原因は、未だはっきりとは分かっていません。ただし、以下のようなことが関係して起こっているのではないか、と言われています。
- 遺伝
- 薬の副作用
- 全身疾患、感染
- 胎児のときの母体の栄養不足
- 人類の進化現象の1つ
大人になっても乳歯のまま?永久歯は生える?
乳歯は、永久歯のもとである「歯胚」に押し出されることで抜けていきます。先天性欠如の場合、この歯胚がありませんので、生え替わりの時期がきても乳歯が残ったままとなります。大人になって歯胚ができる、永久歯が生えてくるということはありません。
先天性欠如、放置するとどうなる?
乳歯を問題なく使い続けることができればいいのですが、残念ながら永久歯のように長持ちさせることは、現実問題として非常に難しくなっています。そもそもの歯質が永久歯ほど強くなく、また根っこも浅いためです。虫歯や歯周病を含めた口腔トラブルをきっかけとして、早くに失われる(抜歯が必要になる)可能性が高いとお考えください。
その他、噛み合わせのバランスが崩れたり、顔貌に影響したりといったことも懸念されます。また、乳歯は永久歯より一回り小さいため、歯列の見た目の問題につながることもあります。
先天性欠如になりやすい歯は?
日本小児歯科学界の調査によると、上顎よりも下顎での発生頻度が高くなっています。
また、中でも、前歯から数えて2番目の「側切歯」、5番目の「第2小臼歯」が欠如するケースが多くなっています。左右差はありません。
先天性欠如の部分はどう治療したらいいの?
先天性欠如によって永久歯が生えず、乳歯が残った場合、その乳歯を生涯使い続けることは難しくなります。
虫歯や歯周病によって失ったとき、抜歯せざるを得なくなったときには、以下のような治療が必要になります。なお、抜けたまま放置することは絶対に避けてください。歯並びが乱れたり、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。もちろん、見た目にも良くありません。
矯正治療
矯正装置を使って残存歯を動かし、歯を失ったところを閉じる方法です。治療期間は長くなりますが、まわりの歯を削ったり、人工物を入れたりする必要がなく、もっとも自然な形を再現できる方法と言えるでしょう。
部分入れ歯
比較的安価にできる治療としては、部分入れ歯が挙げられます。ただし、特に保険の入れ歯の場合は、両隣の歯に金属のバネをひっかけることから、その歯への負担の増加が心配されます。また、咀嚼力も大きく低下します。
見た目や咀嚼率の低さが気になる場合には、自費の部分入れ歯がおすすめです。
ブリッジ
比較的咀嚼力に優れた治療としては、ブリッジが挙げられます。見た目も、保険の部分入れ歯よりは良くなります。
ただし、両隣の健康な歯を大きく削る必要がある点がデメリットとなります。
インプラント
顎の骨の成長が終わる16~18歳頃からは、インプラントも可能になります。見た目、咀嚼力とも、天然歯と変わらない品質が備わっています。まわりの歯の負担を大きくしたり、削ったりといったこともありません。ただし、インプラントを埋入するための手術が必要となります。
保険適応で矯正できる条件
先天性欠如の一部の患者様は、保険適用での矯正治療が受けられます。
対象となるのは、6本以上の先天性欠如が認められる「先天性部分無歯症」の方です。指定自立支援医療機関である病院で治療を行うよう定められているため、先天性部分無歯症の方は、提携する病院をご紹介いたします。