虫歯になりやすい子供の歯(乳歯)
毎日きちんと歯磨きをさせていたのに、虫歯ができてしまったというお子様は少なくありません。
しっかりケアしていたつもりでも「虫歯ができやすい環境」になっている場合があります。
実は、乳歯は永久歯に比べて虫歯になりやすく、また、一度虫歯になってしまうと早く進行してしまう傾向にあります。
お子様が虫歯になりやすい環境要因としては、以下の4つが挙げられます。
理由1.親から子へ虫歯菌が感染するから
産まれてきた赤ちゃんのお口の中には、虫歯菌は存在しません。
虫歯菌の代表であるミュータンス菌は、お父様・お母様の口腔内から感染するケースがほとんどです。
特に乳臼歯(奥の乳歯)が生えてくる生後1年半から2年半の時期は、要注意です。
母乳(ミルク)を卒業し、離乳食がスタートします。
離乳食を食べさせる際に、お父様・お母様がご自身の箸やスプーンで食べさせてしまうことで、感染することが多いです。温かい物をフーフーと息をかけて冷ます行為も、唾液を介して感染するリスクがあります。
また、過度のスキンシップにも十分注意を払いましょう。
この時期に、虫歯菌の感染が少なかったお子様は、それ以降も虫歯菌は少ない傾向にあります。
大人になっても、虫歯になりにくい環境を維持できるのです。
理由2.エナメル質が永久歯の半分しかない
歯の一番外側には、エナメル質という歯質が存在します。
乳歯のエナメル質の厚さは、永久歯の半分程度といわれています。
そのため、虫歯になると、その奥にある象牙質まですぐに虫歯が進行してしまうのです。
また、生えたばかりの永久歯も同様に、まだまだ弱い状態にあります。
歯質がやわらかく、ちょっと歯磨きを怠っただけで虫歯になってしまうことも少なくありません。
理由3.歯をきちんと磨けていないから
磨いていると思っていても、実はしっかり磨けていなかったというご家庭は多いです。
歯と歯の間、奥歯の溝、歯と歯ぐきの境目は、とくに磨き残しが多い場所です。
意識してブラッシングをしないと、歯垢(プラーク)はなかなか除れません。
お子様が小学校以上になると、歯磨きはお子様自身に任せるご家庭が多くなります。
とくに乳歯から永久歯への生え変わりの最中は、歯が不揃いでデコボコになりやすい状態です。
歯磨き残しが多くなってしまい、虫歯のリスクも高まります。
理由4.ダラダラ間食しているから
虫歯の原因菌であるミュータンス菌が「酸」を作ることで、歯が溶かされて虫歯になります。
歯のカルシウムやリンを溶かし(脱灰:だっかい)、やがて歯に穴があきます。
お口の中の唾液は、この酸を中和して脱灰された歯を修復する役割があります。(再石灰化:さいせっかいか)
つまり、唾液によって脱灰と再石灰化のバランスがとれていれば、虫歯を回避できます。
ダラダラと間食をしてしまうと、このバランスが崩れていきます。
せっかく唾液が脱灰した歯を再石灰化しようとしているのに、また脱灰が続いてしまうためです。
糖質の量を気にされるご家庭は多いと思いますが、実は同じくらいその摂取頻度が重要なのです。
虫歯になりやすい場所は?
お子様の年齢によって、虫歯になりやすい場所は異なります。
0~2歳
- 歯の付け根
- 上の前歯
前歯が生えそろう1歳頃は、上の前歯の外側や隣接面に虫歯が出来やすい傾向にあります。
下の歯は唾液による自浄作用が働きやすく、前歯に比べると虫歯になりにくいと考えられます。
また、母乳(ミルク)を飲ませながら寝かしつけるのが習慣化されてしまうと、虫歯を誘発します。
なるべく水やお茶を飲ませて、歯に糖分が付着しない状態を作りましょう。
3歳以降
- 奥歯の溝
- 奥歯と隣接歯の間
3歳以降は、奥歯の虫歯に注意しましょう。
乳歯が生えそろう2歳後半から3歳頃には、普通食になります。
奥歯は噛み合わせる面の溝が複雑なため、汚れが残りやすいです。
かみ合わせが揃う時期でもありますので、とくに注意しながら仕上げ磨きをしてあげてください。
奥歯の歯と歯の間も虫歯になりやすいです。注意しましょう。
5~6歳頃
5~6歳頃には、最初に生えてくる永久歯の六歳臼歯が生えてきます。
固い食べものを噛み砕いたり、すりつぶすために使われるとても大切な歯です。
一番奥に生えてくる頃になると、乳歯は全体に前に押されます。
そして歯と歯の間には余裕がなくなり、ブラッシングしても汚れが落ちにくい状態になります。
歯磨きだけでなく、フロスで歯と歯の間の掃除ができると理想です。
乳歯の虫歯は要注意!?進行が速い子供の虫歯
乳歯は永久歯よりも歯が未成熟なので、神経にまで到達するまでの時間が比較的速くなります。また、乳歯から永久歯への生え変わり時期は、歯並びは乱れやすいです。磨き残しも多くなってしまい、お口の中が不潔になりやすい環境といえます。また、子供は大人よりも痛みに鈍く、初期の虫歯で痛みを感じない場合もあります。
気付いた頃には、虫歯が進行していたというケースは少なくありません。
当院が定期的な歯科健診(予防歯科)に力を入れている理由がここにあります。
乳歯の虫歯を放置すると…
乳歯は最終的に永久歯に生え変わるため、ケアが疎かにされがちです。乳歯の健康状態は、永久歯が正常に生えてくる上でとても重要な役割を果たします。虫歯は決して軽視することなく、しっかり治療を受けることが大切です。
永久歯も虫歯のリスクが高くなる
乳歯の虫歯が進行すると、最終的には歯髄にまで達します。乳歯の下で生える準備をしている永久歯の発育に影響を受けます。
そして、生え変わる前から虫歯菌を持った状態で生えてくる永久歯は、当然虫歯のリスクが高いです。
虫歯によって歯に穴が空くと、食べカスがたまりやすく、発酵して口臭を誘発します。
乳歯の虫歯は、永久歯の形成異常や、変色の原因になります。永久歯の異常のひとつとしてあげられるのが「エナメル室の石灰化不全」です。
これはターナー歯と呼ばれ、歯の表面が白斑や黄褐色斑になったり、わずかな凹みができてしまうものです。
永久歯の形成異常や変色は、見た目にも影響がでます。
歯並びが悪くなる要因になる
乳歯が虫歯となり早く抜けてしまうと、生える準備をしていた永久歯の歯並びが悪くなります。また、本来生える場所ではないところに、斜めに生えてしまうこともあるのです。
歯並びが悪くなると、かみ合わせも悪化します。虫歯を避けて食べ物を噛む癖ができてしまい、顎の骨の発達にまで悪影響を及ぼしてしまいます。
顎の成長が阻害されると、今度は言葉の発達にも悪影響が出てしまうのです。
歯並びが悪くなってしまった結果、見た目にもコンプレックスを抱いてしまうお子様は少なくありません。歯磨きもしにくくなるので、虫歯の再発リスクは高まる一方です。
悪循環を招き、将来的にキレイな歯並びを得るためにも、乳歯の虫歯は放置せずにしっかりと治療しましょう。